#未定義
プレシリーズAは、プロダクトがある程度できあがっているものの、シリーズAの調達基準にはまだ達していない段階です。売上が立ち始めていたり、初期のトラクションがあったりしても、根拠を持って説明できる企業価値を定めるのは難しい状態です。通常の株式投資で調達すると、その時点で企業価値を確定させる必要があり、その数字が次のラウンドで足かせになることがあります。そのため、投資家と創業者が企業価値の議論を先送りし、次のラウンドの条件に基づいて転換することで合意し、それをCBとして契約化するケースがよくあります。
創業者から見ると、CBは短期的には有利に見えます。すぐに持分を渡す必要がなく、企業価値の交渉をせずに資金を調達できるからです。しかしCBの契約には、将来のラウンドで創業者の持分と交渉力を制約する条項が含まれています。構造を理解して署名する創業者と、理解せずに署名する創業者では、シリーズAを迎える頃には状況が大きく異なります。
| 項目 | 普通株式による投資 | 転換社債(CB) |
|---|---|---|
| 企業価値を決める時点 | 投資時 | 転換時(次のラウンド) |
| 即時の持分希薄化 | あり | なし(転換までは) |
| 利息の発生 | なし | あり(通常、年率2〜5%) |
| 満期時の返済義務 | なし | あり(未転換の場合) |
| 契約の複雑さ | 比較的シンプル | 交渉可能な条件が多岐にわたる |
すぐに希薄化しないことはCBの大きな利点ですが、満期時の返済義務と利息負担を伴います。さらに重要なのは、転換の瞬間にどのような条件が適用されるかという中身です。それが、以下で扱う3つの交渉ポイントの核心です。
#未定義
CBが株式に転換される際に適用される価格を、転換価格と呼びます。転換価格が1株₩10,000なら、₩100Mを投資した投資家は10,000株を受け取ります。問題は、この転換価格を後からシリーズAの評価水準よりも低く引き下げられる条項、すなわち価格修正(リフィキシング)条項です。
価格修正は一般に2つの方法で行われます。1つ目は、株価が下がると転換価格を自動的に引き下げる下方修正です。シリーズAの企業価値がCB発行時より低くなるダウンラウンドが起きると、CB投資家が受け取る株式数が増えます。その結果、創業者と既存株主の持分は想定を大きく超えて希薄化します。2つ目は割引率を適用する仕組みで、次のラウンドの転換価格から10〜20%を割り引き、CB投資家に有利な価格を与えます。
創業者が交渉で固めるべき点は3つです。価格修正に数値の下限を設けること(例:当初発行価格の70%を下回らない)、割引率の上限を契約に明記すること(20%を超える場合は再交渉すべき)、そして対称的な上方修正条項も入れることです。下方修正だけがあり、それに対応する上方修正がない構造は、創業者に一方的に不利です。
#未定義
CBは満期のある負債です。満期までに転換されなければ、元本と利息を返済する義務があります。プレシリーズAのCBは、通常1〜3年の満期を設定します。シリーズAが想定より遅れると、満期の設計を後回しにした創業者は資金繰りの危機に直面します。
交渉で必ず確認すべき点は3つです。延長オプションがあるか、投資家の同意なしに満期を延長できるか、そしてプットオプション(投資家の早期返済請求権)がどの条件で発動するかです。早期返済の発動条件が「経営状況の悪化」「財務目標の未達」といった曖昧な文言に結び付いていると、投資家が自分に有利だと判断したときに返済を求められる構造になります。
実務でよく見られる危険な組み合わせは、2年の満期に、広く定義された早期返済条件を付けることです。創業者は建前上2年あると思っていても、実際には数か月で返済請求が届くことがあります。契約を確認するときは、早期返済の発動条件を1つずつ列挙し、それぞれが創業者の実際の管理・対応可能な範囲にあるかを確認してください。
| 満期設計の項目 | 創業者に有利な条件 | 注意すべき条件 |
|---|---|---|
| 満期までの期間 | 2年以上、延長オプションあり | 1年以下、または延長不可 |
| 早期返済の発動条件 | 具体的かつ客観的な数値基準 | 曖昧な経営判断基準 |
| 利息の支払い方法 | 満期時に一括払い | 四半期または半期ごとの現金払い |
| 転換の優先条件 | 投資家が転換するかどうかを選べる | 創業者が転換を強制できない |
#未定義
CBが株式に転換されると、投資家は通常、特定の種類の優先株式を受け取ります。その優先株式にどのような権利が付くかは、創業者の将来の交渉力に直接影響します。特に重要なのが、残余財産分配優先権と希薄化防止条項です。
残余財産分配優先権は、会社が売却または清算された際に、優先株主が普通株主より先に、かつ多くの分配を受ける仕組みです。1倍・非参加型の優先権は、投資家がまず投資元本を回収するだけなので、創業者にとって比較的不利の小さい条件です。一方、参加型では、投資家は元本を先に回収したうえで、残りの財産から持分に応じた分配も受け取れます。エグジットの規模が小さいほど、この違いは創業者やストックオプション保有者にとって深刻になります。
希薄化防止条項は、ダウンラウンドが起きた場合にCB投資家の持分価値を守るものです。ブロードベースの加重平均方式は、創業者にとって比較的有利です。一方、フルラチェット方式では、ダウンラウンドで適用される最も低い転換価格でCB投資家の全株式を転換するため、創業者の持分が大きく希薄化します。プレシリーズAの段階でフルラチェット条項を受け入れるのは、極めてリスクの高い判断です。
この3つ目の交渉領域は、法律の専門家なしで対応するのが最も難しい部分です。少なくとも、スタートアップの投資契約に詳しい弁護士に、残余財産分配優先権の種類と希薄化防止条項がシナリオごとにどう影響するか、数字で計算してもらいましょう。これらの条項の意味は、数値にして初めてはっきりします。
#未定義
CBの契約書を受け取ったら、交渉の席に着く前に、以下の項目を順に確認してください。「わからない」が1つでもあれば、そこはまだ準備ができていない箇所です。
- 転換価格が明記され、価格修正に数値の下限が設けられていますか?
- 割引率が適用される場合、その率は何%で、上限が契約に明記されていますか?
- 満期まで何年あり、延長を決めるのは創業者と投資家のどちらですか?
- 早期返済の発動条件は、具体的な数値基準として列挙されていますか?
- 利息は満期時の一括払いですか、それとも途中で現金払いが発生しますか?
- 転換時に受け取る株式の種類と、残余財産分配優先権の種類(参加型・非参加型)が明記されていますか?
- 希薄化防止条項がある場合、加重平均方式かフルラチェット方式かを確認しましたか?
- 今回のCB発行は、既存の株主間契約(SHA)や定款と矛盾しませんか?
- スタートアップの投資契約に詳しい弁護士が契約全体を確認しましたか?
9項目中7項目以上を確認できていれば、交渉の準備はできています。5項目未満なら、署名を見送り、先に1つずつ解決してください。投資家との関係を損なうことを恐れて質問を先延ばしにする創業者は多いものの、この段階での質問は、創業者が自社の事業をどれほど理解しているかを示すものとして投資家に受け取られます。
#未定義
Q1. 創業者にとって、CBとSAFEのどちらが有利ですか? SAFEには満期も利息もないため、現金負担がなく、構造もシンプルです。CBは韓国の株式会社にとって法的に確立された金融商品で、税務・会計処理も明確です。韓国のVC・エンジェル投資のエコシステムでは、CBのほうが広く使われています。どちらの手段を使うにしても、重要なのは細かな条件です。手段の選択よりも、条件交渉を優先しましょう。
Q2. 投資家の提示条件に修正を求めると、関係が悪くなりますか? 契約に署名するまでは、交渉はプロセスの自然な一部です。合理的な修正依頼を拒む投資家は、むしろ今後付き合いにくい相手かもしれないというサインです。ただし、修正依頼には感情ではなく根拠を添えるべきです。「この条項ではダウンラウンド時に創業者の持分がX%からY%へ下がるため、この修正を提案します」と数字で説明すると、合理的で生産的な交渉を続けられます。
Q3. 法律事務所を使わず、自分だけでCB契約を確認できますか? 基本的な条項の意味は自分でも理解できますが、条項同士の矛盾、既存の定款や株主間契約との抵触、シナリオ別の数値への影響まで一人で計算するのは困難です。シード期に弁護士への相談費用を惜しんだ結果、シリーズAまでに数億ウォン相当の価値が希薄化してしまう創業者は珍しくありません。
Q4. プレシリーズAでCBを発行した後、シリーズAが遅れたらどうなりますか? 満期までに転換されなければ、元本と利息の返済義務が生じます。延長条項がなければ、創業者が直接現金を用意しなければならない場合があります。これを防ぐため、「シリーズAが完了していなければ、満期を1回自動延長する」といった条項を最初に交渉するか、延長時の投資家同意要件を緩和する文言にあらかじめ合意しておきましょう。
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