#2つの評価軸を分ける理由
事業計画書では、実行計画と顧客獲得戦略が同じセクションにまとめられていることがよくあります。一方が強いと、もう一方の弱さが平均に埋もれてしまいます。実際には、この2つはそれぞれ独立して失敗の原因になります。十分な能力を持つチームでも、チャネルがなければ顧客に届きません。市場が明確でも、作る人がいなければ製品は生まれません。この2種類の失敗は、根本原因も対策も異なります。
OpenSeedはこれらを、明確に分けた2つの審査軸として扱います。実行可能性の評価軸では、「このチームは実際にこの計画を実行できるか」を問います。顧客への到達可能性の評価軸では、「実行した場合、実際に顧客へ届くか」を問います。2つの点数に大きな差がある場合、弱いほうの評価軸が事業全体のリスクを高めているサインです。
#実行可能性の評価軸 — 何を確認するのか
実行可能性の評価軸では、計画書に記載されたスケジュール、チーム、予算が、現実的にかみ合っているかを確認します。優れたアイデアでも、実行条件が整っていなければ紙の上にとどまります。この評価軸が確認する重要な項目は4つあります。
| 評価項目 | 強みと評価される要素 | 弱点と評価される要素 |
|---|---|---|
| チームと事業領域の適合性 | 創業者とチームの経験が製品の領域に直接結びついている | 関連する経験がなく、計画が全面的に外注に依存している |
| マイルストーンの具体性 | 四半期ごとの成果物と担当者名が明記されている | 「下半期にリリース予定」のような曖昧なスケジュール |
| リソースと予算の整合性 | 人件費と外注費がスケジュールの具体的な段階に結びついている | 予算表と実行計画が連動していない |
| リスク認識 | 技術や人員のリスクと、その軽減策を記載している | 「大きなリスクはない」としている、または項目自体が抜けている |
この評価軸で最もよく指摘されるのは、担当者のいないスケジュールです。計画書には3か月後にアプリをリリースすると書かれていても、現時点でチームに開発者がいない、あるいは開発者が別のプロジェクトで手いっぱい、というケースです。
#顧客への到達可能性の評価軸 — 何を確認するのか
顧客への到達可能性の評価軸では、製品が完成したと仮定し、最初の顧客をどのように、どれだけの費用で獲得するのかを問います。市場規模の数値は、この点数には影響しません。獲得可能な市場全体がどれほど大きくても、そこへ到達する具体的な道筋がなければ、点数は下がります。
| 評価項目 | 強みと評価される要素 | 弱点と評価される要素 |
|---|---|---|
| 初期チャネルの明確さ | 最初の100人のユーザーを、どこで、どのように獲得するかを明確に説明している | 「SNSで宣伝する」 |
| チャネル費用の根拠 | 類似事例やテストデータに基づく見積もりがある | 裏づけなく月間1,000人のユーザー獲得を主張している |
| 顧客セグメントの具体性 | 行動と状況に基づいてペルソナを定義している | 「20–30歳の女性」のように人口統計的属性だけで定義している |
| 初期顧客の検証 | インタビュー、事前登録、試験販売をすでに実施している | 「製品が完成するまで検証できない」 |
この評価軸で高い点数を得るには、「リリース後にマーケティングを行う」だけでは不十分です。計画書には、リリース前に顧客と接触した証拠、または接触するための具体的な道筋が必要です。
#点数を下げる3つのパターンと改善方法
両方の評価軸で低い点数につながりやすいパターンが3つあります。それぞれ現れる問題と改善方法が異なります。
- パターン1:実行計画のすべてを外部に頼っている — 開発、デザイン、マーケティングをすべて外部に委託する予定で、社内に実行能力がありません。実行可能性の評価軸では、外注依存のリスクとして指摘されます。改善方法:委託先がすでに決まっている場合は、契約書や協議記録などの証拠を示し、社内に能力を蓄積するためのロードマップも記載します。
- パターン2:市場は大きいが、最初の接点がない — 市場規模の数値は具体的でも、最初の100人の顧客をどこから獲得するかが書かれていません。顧客への到達可能性の評価軸では、チャネルの欠如として指摘されます。改善方法:コミュニティ、業界団体、既存の人脈など、今すぐ接触できる見込み顧客の集まりを特定し、どのように働きかけるかを1〜2段落で記載します。
- パターン3:両方の評価軸が将来の話だけになっている — 実行と顧客への到達がすべて未来形で書かれ、現時点での検証記録がありません。両方の評価軸で減点が重なります。改善方法:顧客インタビュー5件、事前登録フォームへの回答、試験販売など、すでに行ったことを記録し、計画書に追加します。
3つのパターンには、「今、何を持っているのか」の説明が不足しているという共通の弱点があります。事業計画書が描くのは未来ですが、審査では現在の証拠を通して将来性を判断します。
#両方の評価軸を満たすためのチェックリスト
実行可能性と顧客への到達可能性の両方を満たす事業計画書を書く際に、このチェックリストを使ってください。チェックを入れられない項目があれば、そこから計画書を補強しましょう。
- 各チームメンバーの氏名、役割、関連する経験が、製品の領域と結びついている。
- すべてのマイルストーンに、担当者名と明確な完了基準(成果物)がある。
- 予算の各項目が、実行スケジュールの具体的な段階に結びついている。
- 技術、人員、市場に関するリスクを少なくとも1つ挙げ、それに対応する軽減策を記載している。
- 最初の100人の顧客を獲得するための具体的なチャネルとアプローチを記載している。
- 顧客セグメントを、人口統計的属性だけでなく、行動と状況に基づいて定義している。
- リリース前の顧客検証活動(インタビュー、事前登録、試験導入)を少なくとも1つ記録している。
- チャネル費用の見積もりに、類似事例や自ら実施したテストの結果による裏づけがある。
#よくある質問
Q. 両方の評価軸の点数を直接確認できますか?
OpenSeedの審査レポートでは、実行可能性と顧客への到達可能性が別々の項目として表示されます。各項目には、点数の理由を説明するメンターコメントが付いています。
Q. 実行可能性の点数が低くても、顧客への到達可能性の点数が高ければ、総合点にはプラスになりますか?
2つの評価軸は独立して評価されますが、どちらか一方が一定の基準を下回ると、事業全体の成立可能性に疑問が生じます。レポートでは、弱いほうの評価軸で具体的にどの記述が不足しているかを指摘します。
Q. まだごく初期の段階で、顧客検証の実績がまったくない場合はどうすればよいですか?
検証実績がないだけで、自動的に減点されるわけではありません。ただし、実績が少ないほど、最初の顧客にどう接触するかを、より具体的に説明する必要があります。インタビュー予定者のリスト、接触方法、試験運用の計画でも、顧客への到達可能性の点数を高められる可能性があります。