#価格を決める3つの方法と、その限界
価格の決め方は、大きく3つあります。初期の起業家の多くは、最初の2つにとどまっています。しかし、3つの中で圧倒的に強いのは、3つ目です。
| 方法 | 決め方 | 限界 |
|---|---|---|
| 原価基準 | 原価に利益を上乗せする | 顧客が感じる価値とは無関係。原価が低いと、自らの価値を安売りする理由にしてしまう |
| 競合基準 | 競合と同じ価格、またはそれより安くする | 自社ならではの違いが反映されない。利益率を削る価格競争に引き込まれる |
| 価値基準 | 顧客が得る価値と支払意思額に基づいて決める | 測定が難しい。ただし、適切に設定できれば、利益率と価値のメッセージを同時に確保できる |
原価基準の価格設定は、「自分のコスト」を基準にします。競合基準の価格設定は、「他社の価格」を基準にします。どちらも、顧客が計算の外に置かれています。価値基準の価格設定は、「顧客はこれで何を得るのか、それにいくら払う意思があるのか」から始まります。
#支払意思額(WTP)を簡単に測る方法
支払意思額(WTP)とは、顧客がそのプロダクトに払ってもよいと考える上限金額です。価値基準の価格設定に欠かせない情報です。ただし、測り方を間違えると、価格設定に役立つどころか、むしろ狂わせてしまいます。
価格そのものを直接尋ねるより、価格をどう感じるかを尋ねるほうが確実です。価格調査でよく使われる4つの質問を言い換えると、次のようになります。
- いくらなら、「安すぎて品質が心配だ」と感じますか?
- いくらなら、「お得で、買い得だ」と感じますか?
- いくらなら、「高いが、検討する価値はある」と感じますか?
- いくらなら、「高すぎて、まったく買う気にならない」と感じますか?
複数の人から回答を集めると、「安すぎる」と「高すぎる」の回答が重なる位置が見えてきます。その間が、受け入れられる価格帯です。ただし、これは出発点にすぎません。本当の検証は、実際にお金を受け取ることです。
#初期の起業家によくある価格設定の間違い
価格設定には、自信の問題も関わります。プロダクトへの確信が弱いほど、以下の間違いに陥りやすくなります。
| 間違い | 危険な理由 |
|---|---|
| 無料で提供する | 有料化への抵抗が極めて強くなる。「以前は無料だったものに、なぜ払うのか」という意識が強く定着する |
| 価格を安くしすぎる | 低価格は低い価値を示すメッセージになる。本来獲得したかった、本気で取り組む顧客を失ってしまう |
| 値上げを恐れる | 最初の価格は変えられないという思い込み。実際には、初期こそ最も調整しやすい |
| 割引を多用する | 割引が当たり前になると、定価の意味が失われる。次に来る顧客も、みな割引を待つようになる |
「安くすれば顧客が増える」という前提は、初期には外れることがよくあります。安い価格は、価格にしか反応しない顧客を引き寄せます。定着しにくく、要求は多い。そこから、顧客1人当たりの利益が崩れ始めることがあります。
#安く始めて上げるより、高く始めて下げるほうが容易
価格は、下げるのは簡単で、上げるのは難しいものです。両者は対称ではありません。だからこそ、初期は「自分が思うより少し高め」から始めるほうが無難です。
| 変更の方向 | 顧客の反応 | 調整の余地 |
|---|---|---|
| 高く始める → 下げる | 「割引してもらえた」と感じ、歓迎される | 広い。キャンペーンや顧客層ごとの調整がしやすい |
| 安く始める → 上げる | 「裏切られた」と感じ、離脱を招く | 狭い。既存顧客の抵抗で、事実上変更できなくなる |
高い価格で売れなければ、「高すぎる」と学べます。その後で下げればよいのです。安い価格で顧客が殺到しても、あとどれだけ高くできたかはわかりません。その情報は、失われたままになります。
#価格設定のチェックリスト
価格を決める前に、以下のリストを順番に確認しましょう。勘に頼るのではなく、根拠を積み上げるための手順です。
- このプロダクトが顧客にもたらす価値、つまり節約できる、または生み出せる金額や時間を、1文で説明できますか?
- 原価や競合ではなく、価値から価格の仮説を立てましたか?
- 少なくとも5〜10人に、支払意思額に関する質問をしましたか?(価格そのものを直接聞く質問ではありません)
- 受け入れられる価格帯の上限に近いところから始めると決めましたか?(高く始めて下げる原則)
- 購入ボタン、予約注文、前払いなど、「言葉ではなく行動」を兆候として捉える仕組みがありますか?
- まず定価を決めたうえで、割引は理由と期限を明示した例外としてのみ使うと決めましたか?
- 3か月後に価格を見直す日を、カレンダーに入れましたか?
#よくある質問(FAQ)
Q. 競合は無料です。どうすれば有料で提供できますか?
A. 無料の競合は、通常、別のところで収益を得ています(広告、データ、上位商品への誘導など)。広告、制限、不安定さなど、顧客が「無料」の不便さをはっきり感じる点があれば、その価値の差が価格の根拠になります。無料と正面から競うのではなく、無料では提供できない価値を売りましょう。
Q. まだデータがありません。どう価格を決めればよいですか?
A. 最初の価格は「検証済みの答え」ではなく、「検証するための仮説」です。価値を出発点に仮の価格を決め、購入ボタンや前払いから得られる実際の反応を基に、素早く調整しましょう。完璧な価格を待って公開を遅らせるほうが、大きな損失になります。
Q. 値上げしたら、既存顧客が離れてしまいませんか?
A. よく使われる方法は、既存顧客には現在の価格を適用し続け、新規顧客だけ値上げすることです。顧客を失うのが怖くて価格を据え置くと、もっと払ってくれたはずの新規顧客から得られる価値を、取り逃し続けることになります。
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