#VCが最初に見るもの — 市場と創業者
VCの最初の選別基準は単純です。市場の規模と成長性、または創業者の粘り強さと人柄のどちらかに、強く引きつけられるものがあるか。両方とも中途半端なら、計画がどれほど洗練されていても見送られます。初期投資は、あらゆる項目が平均点の会社を探すことではなく、1つの軸で圧倒的に強い会社を見つけることです。
| 視点 | 強く引きつけられる要素 | 引きつける力が弱い状態 |
|---|---|---|
| 市場 | 大きく、急成長し、明確な変化が進んでいる市場 | 停滞した市場、または大きくても明確な参入の糸口がない市場 |
| 創業者 | 1つの領域への深く粘り強い取り組み、実証された実行実績 | 派手なアイデアはあるが、実行の証拠がない |
段階が早いほど、創業者の比重は高まります。シードでは、チームが評価全体の約半分を占めることもあります。プロダクトも売上も顧客もない時点では、実質的に検証できるのがチームしかないためです。段階が進むにつれて、市場規模や数値指標の比重が高まります。
#市場 — 大きな市場の一部か、小さな市場の全体か
VCが市場について最終的に問うことは、1つに集約されます。₩1Tの市場の5%を狙うのか、それとも₩100Bの市場の50%を狙うのか。初期投資家は、小さな市場を支配する会社より、大きな市場の一部を獲得する会社を好みます。小さな市場では、シェア50%を取っても必要な投資倍率を生み出せないためです。
現在の市場規模よりも、成長率のほうが重要です。今は小さくても10年後に大きくなる市場は、今は大きくても停滞している市場に勝ります。VCが賭けているのは、市場規模の絶対値ではなく、変化の傾きです。
この選好は、初期投資のリターンがべき乗則に従うことから生まれます。約100社のポートフォリオでは、上位の数社が総価値の大部分を占めます。平均的な成果は、ファンドのリターンにほとんど寄与しません。そのためVCは、10倍以上に成長する可能性を示す会社にのみ賭けます。
| VCが見るもの | 検証方法 |
|---|---|
| 市場の成長の傾き | 過去3〜5年の市場の変化と、規制・技術・人口動態の変化の方向 |
| 10倍成長の余地 | シェアのシミュレーション — シェア50%で売上はいくらになるか |
| 足がかりとなる市場 | 最初の対象として定義した最小市場で、100%を獲得する道筋 |
最初から大市場を狙うのではなく、小さな市場を支配することから始め、同心円状に外へ広げていきます。書籍という単一カテゴリーから始まったEC企業、あるマーケットプレイスの有力出品者グループから始まった決済企業、1つの大学キャンパスから始まったSNSは、いずれも同じ道をたどりました。初日から巨大市場を狙うと主張するピッチは、むしろカテゴリーの定義を誤っている兆候と受け取られます。
#創業者 — 語ることより、すでに実行したこと
VCが創業者に求めるのは、ビジョンの大きさではなく実行の証拠です。タームシートという言葉を知らなくても、ユーザーが心から愛するプロダクトを作った人のほうが、あらゆる資金調達手法に詳しくても利用状況が横ばいの人より、資金を集めやすいのです。計画ばかりが詰まり、「すでに実行したこと」が乏しい事業計画は、すぐに評価を下げられます。
| 創業者の資質 | VCが確認すること |
|---|---|
| 実行の証拠 | MVP、顧客インタビューの記録、失敗と再挑戦の痕跡 |
| 誠実さと自己認識 | 知らないことを認めるか、弱点を隠していないか |
| メタ認知 | 自分の盲点を理解し、補う人材を採用しているか |
| 粘り強さ | 1つの領域に5〜10年打ち込んできた形跡 |
| 人材を集める力 | 共同創業者や初期メンバーを迎えた経緯 |
この中でも、能力より先に来るのは誠実さです。一度壊れた信頼は戻りません。検証可能な数値を水増ししたり、弱点を隠したりする兆候があれば、市場やチームがどれほど魅力的でも、その場で審査は終わります。あらゆる点で競合より優れていると主張し、トレードオフを一切認めないピッチは、創業者が実際には何にも自信を持っていない兆候と受け取られます。
#事業構造 — 資金調達なしでも成り立つか
逆説的ですが、VCが最も投資したいのは、資金調達をほとんど必要としない会社です。外部資金なしでも成長できるほど資本効率が高い事業構造は、それ自体が強いシグナルになります。反対に、資金調達できて初めて成り立つように作られた事業は、資本効率と真っ向から矛盾します。
VCが見ているのは売上の絶対額ではなく、ユニットエコノミクスです。顧客を獲得する費用と得られる価値の関係(LTV、CAC)、獲得した顧客が実際に残るか(継続率、リピート購入率)、週次または月次の成長率を見ます。最初に重視される具体的な指標は、事業の種類によって異なります。
| 事業の種類 | VCが最初に確認する指標 |
|---|---|
| サービス・プラットフォーム | MAU、WAU、DAU、再訪率、DAU/MAU比率 |
| コマース | 流通取引総額、リピート購入率、ROAS、平均注文額、CAC |
| サブスクリプション・SaaS | MRR/ARR、LTV:CAC、NRR、ARPU |
労働集約的で利益率が低い実店舗型の事業は、売上と同じペースで費用が増えるため、Jカーブを描けません。そのような構造は、事業そのものの良し悪しにかかわらず、VC資金には適していません。デジタル事業では、VCはグローバル展開への道筋も確認します。韓国内市場だけを対象にした事業は、審査通過率が低くなる傾向があります。
#競争優位の持続性 — 6か月後も生き残っているか
差別化は形容詞ではなく、構造です。「革新的」「唯一無二」といった言葉だけでは、競争優位を守れる証拠になりません。時間がたっても実際に機能する参入障壁は、4つの形に限られます。
| 参入障壁 | 意味 |
|---|---|
| 独自技術 | 次善の代替手段より明確に優れた技術 — わずかな改善では足りない |
| ネットワーク効果 | 利用者が増えるほどプロダクトの価値が高まる構造 |
| 規模の経済 | 規模が大きくなるほど単位コストが下がる構造 |
| ブランド | 同じ製品でも、その名前を理由に選ばれる信頼資産 |
汎用AIモデルのAPIに薄い機能をかぶせただけのプロダクトは、6〜12か月で競争力が薄れます。本物のモートは機能ではなく、他者が再現しにくい資産から生まれます。自ら収集・精製した独自データ、特定領域への深い統合、蓄積されたユーザー行動データなどです。VCが問うのは現在の姿ではなく、競合が追いついた後にも何が残るかです。
テクノロジー企業の価値の大部分は、近い将来ではなく、遠い将来のキャッシュフローから生まれます。だからこそVCは、成長速度以上に持続性を厳しく見ます。価値を獲得するのは、最速で首位になった会社ではなく、そのカテゴリーの最後まで生き残る会社です。
#VCの判断モデル — ポーカー、玉ねぎ、強み
VCの判断は、その場の直感だけで生まれるものではなく、繰り返し使うモデルに従っています。そのモデルを理解すれば、各段階で何を証明すべきかが明確になります。
- ポーカーのゲーム — 初期投資は、1〜3枚のカードで賭ける行為です。シードは1枚、プレAは2枚、シリーズAは3枚です。情報が少ないほど、すべての弱点を弁護するより、投資すべき明白な理由を1つか2つ持つことが重要になります。
- リスクの玉ねぎ — スタートアップは、チーム、プロダクト、技術、市場での受容、売上というリスクの層に包まれた玉ねぎです。各資金調達ラウンドは、その層を1枚ずつ剥がす手段です。強いピッチは、今回のシードでどのリスクを取り除き、次のラウンドで何を取り除くのかを、意図的に設計して示します。
- 強みへの投資 — 大きく飛躍する会社の多くは、突出した強みと許容できる欠点の組み合わせです。欠点のない会社だけを探すVCは、大きな成功をすべて逃します。VCが見るのは弱点の不在ではなく、強みの大きさです。
- 投資枠の制約 — VCの本当の制約は資金ではなく、時間と取締役として関与できる社数です。十分に良い会社でも、将来さらに良い機会が現れる可能性に備えて枠を空けておくため、見送られることがあります。これが「すべてを満たしていたのに、なぜ断られたのか」への答えです。
各段階には、期待される数値の大まかな目安もあります。こうした基準を知らなければ、どのラウンドに向けて何を準備すべきか判断しにくくなります。
| 項目 | 初期段階の目安 |
|---|---|
| プロダクト・マーケット・フィットの証拠 | 有料顧客5件以上、または前月比15%以上の成長 |
| B2Bサブスクリプションの継続 | 売上継続率(NRR)100%以上 |
| B2Cの利用頻度 | DAU/MAU比率25%以上 |
| 初期チームへの株式付与 | 最初の主要採用者に約10%、4年のベスティングと1年のクリフ |
| ラウンドごとの希薄化 | シード10〜15%、シリーズAは20〜30%以内 |
#その場でVCの審査が打ち切られる危険信号
以下の兆候があれば、市場や創業者がどれほど魅力的でも、審査は即座に終了します。提出前に、事業計画を1つずつ照合してください。
| 危険信号 | VCの受け止め方 |
|---|---|
| 「資金調達さえできれば成功する」が前提 | 外部資金への依存度が高く、資本効率と矛盾する |
| 早期エグジットやIPOを主目的に据える | 長期にわたってやり抜く可能性が低い創業者 |
| ビジョンと市場規模を繰り返し、実行の証拠が乏しい | 計画ばかりで行動がない |
| トレードオフを一切認めない | 集中や優先順位の意識がなく、何かを隠している |
| 信頼や誠実さを損なう行為 | 能力や市場に関係なく、即座に審査終了 |
| 根拠のない共同創業者間の均等持分、急ごしらえのチーム | 責任が分散し、危機の際に真っ先に崩れる |
| 中核能力を「後で採用して補う」計画 | 事業が実際に依存する中核能力を確保していない |
| 他社のやり方を丸ごと模倣する | 独自のアプローチがない |
| 適正価格の200%以上に企業価値を設定する | 次回ラウンドの失敗リスクを高める交渉姿勢 |
#セルフチェック — 事業計画はVCの問いに答えていますか
- 自社の市場をより大きな市場の一部として定義し、シェア50%時の売上を試算しましたか。
- 最小の足がかり市場で100%を獲得するところから始まる道筋を示しましたか。
- ビジョンだけでなく、実行済みのこと、MVP、顧客、実験結果を通じて実行力を証明しましたか。
- 弱点やトレードオフを認めたうえで、強みを説明していますか。
- LTV、CAC、継続率など、事業の種類に合うユニットエコノミクス指標を、裏付けとともに盛り込みましたか。
- 形容詞ではなく、4つの実効的な参入障壁のいずれかでモートを説明していますか。
- 今回のラウンドでどのリスクを取り除くか、意図的な設計を示しましたか。
- 事業計画に、この9つの危険信号のいずれかが含まれていませんか。
VCに聞かれる前に、その問いに答える
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