#100件審査 → 2件に投資:ファネルの全体像
Mashup AngelsのLee Taek-kyungは著書で、「B社」と呼ぶ仮想の投資会社について、1年分の実際のファネルデータを紹介しています。意思決定は6段階に分かれ、創業者が見送られる理由は段階ごとに異なります。
| 段階 | 検討案件数 | 前段階からの移行率 | 累積移行率 |
|---|---|---|---|
| ① 初回面談 | 100 | — | 100% |
| ② 再面談 | 40 | 40% | 40% |
| ③ IRピッチ | 15 | 37.5% | 15% |
| ④ 予備投資委員会 | 8 | 53% | 8% |
| ⑤ デューデリジェンス | 5 | 62.5% | 5% |
| ⑥ 最終投資委員会 | 3 | 60% | 3% |
| ⑦ タームシート・投資実行 | 2 | 67% | 2% |
#第1段階・初回面談 — 資料形式と曖昧な一文ピッチで60件が脱落
100件中60件は、2回目の面談を行わないという判断で終わります。Lee Taek-kyungのペルソナをモデルにすると、主な理由は次のとおりです。
- HWPやDOC形式で資料を送る — 開いてもらうことすらできない(標準はPDF)
- チーム紹介がない — Lee自身はこれを、韓国語で「中身のないまんじゅう」に当たる表現で呼んでいる(第4章)
- ビジネスモデルの核心を1分以内で伝えられない — 抽象的な流行語が多い
- 希望調達額や調達時期が書かれていない — 最初から投資ステージとの適合性を判断できない
- 投資対象のステージや業種が合わない投資家へ、面識のないまま一斉にメールを送る
- 初めて送るメールの本文に、別の投資家の名前が残っている
#第2段階・再面談 — ペインポイントの検証不足で25件が脱落
初回面談を通過した40件のうち、25件は再面談の日程が決まらないか、再面談後に停滞します。初回面談の感触は良かったものの、「引き続き様子を見ましょう」で終わった案件がとどまるのはこの段階です。
| 主な理由 | VCの言い方 | 次に取る行動 |
|---|---|---|
| ペインポイントの検証が弱い | 「顧客が本当にお金を払ってでも解決したい問題ですか?」 | MVP、インタビュー、支払いデータのいずれか1つの根拠を追加し、再面談を依頼する |
| 市場規模の推計に根拠がない | 「市場が小さく見えますね」 | TAM/SAM/SOMを客観的なデータで裏付ける |
| チームの結束に疑問がある | 「共同創業者のお2人は、どのように知り合ったのですか?」 | 一緒に働いた経験と役割分担を明確にする |
| 日程が先延ばしになり続ける | 「また来月、時間を合わせましょう」 | 正式な断りがなくても、ほかの候補を探し始める時期だと判断する(第4章) |
#第3段階・IRピッチ — 資料作成のミスで7件が脱落
ピッチに招かれた15件のうち、7件はIR資料そのものが原因で見送られます。直接の原因は通常、Leeが示すIR資料作成の8つのコツ(第5章)のうち、よく破られるルールのいずれかにあります。
- 「何をするか」ばかりで「どう実現するか」がない — 目標は書かれているが、そこに至る段階的な戦略がない
- 「世界最高」「他に類を見ない」といった抽象的な表現に裏付けがない
- あらゆる面で競合に勝っていると主張する — トレードオフの存在を無視している
- 外部アドバイザーを過度に強調する — フルタイムのチームの弱さを覆い隠している
- 収益性への言及を完全に避けている
- エグジット(IPOまたはM&A)への道筋に触れていない
#第4–6段階・投資委員会とデューデリジェンス — 裏付け確認を通過できず5件が脱落
予備投資委員会を通過した8件のうち、最終投資委員会まで通過できるのは3件だけです。この範囲での見送りは、もはやIR資料の問題ではありません。多くは「数字が合わない」「法務・財務面の整理が済んでいない」という問題です。
| 段階 | 理由 | VC社内での表現 |
|---|---|---|
| ④ 予備投資委員会 | 別のパートナーからの反対 | 「パートナーの1人から強い懸念が出ました」 |
| ⑤ デューデリジェンス | 帳簿上の仮払金、定款、知的財産権の帰属に問題がある | 「デューデリジェンスで、まだ整理が必要な点が見つかりました」 |
| ⑥ 最終投資委員会 | 企業価値評価の交渉が決裂 | 「バリュエーションの認識差を埋められませんでした」 |
| ⑦ 契約締結 | 負担の重い条件で合意できない(株式買い戻し・プットオプション条項における連帯責任など) | 「標準条件で合意できませんでした」 |
#断り文句のニュアンスから段階を逆算する
「第3段階で見送りになりました」と明言してくれるVCはいません。断り文句のニュアンスから逆算する必要があります。Leeの著書に「早く断ってくれる投資家は、あなたのためになっている」という一文があるのは、まさにそのためです。ニュアンスを正しく読めば、次の挑戦に使える情報になります。
| 断り文句のニュアンス | 考えられる段階 | 次に取る行動 |
|---|---|---|
| 返信がまったくない、または「事業のご成功をお祈りします」 | 第①段階 — 資料形式、または不明確な一文ピッチ | PDF、チーム紹介、一文ピッチを修正し、再挑戦する |
| 「もう少し進捗が出たら、またお話ししましょう」 | 第②段階 — 検証不足 | MVPを作り、支払いデータを蓄積して、6か月後に再アプローチする |
| 「社内の合意に至りませんでした」 | 第③段階 — IR資料そのものの問題 | 実現方法、トレードオフの説明、エグジットの筋道を強化する |
| 「パートナーの1人から強い懸念が出ました」 | 第④段階 — 別のパートナーからの反対 | 補足資料を用意し、ほかの投資会社にもアプローチする |
| 「デューデリジェンスで整理が必要な点が見つかりました」 | 第⑤段階 — 財務・法務面の未整理 | 会計士と弁護士を通じて整理する |
| 「バリュエーションの認識差を埋められませんでした」 | 第⑥段階 — 企業価値評価の交渉 | 希望評価額を、自社のステージにおける標準的な範囲内へ見直す |
#各段階で最初に直すべきこと
どの段階で見送られるかにパターンが見えてくれば、優先順位はおのずと決まります。全段階を一度に直そうとすると、結局どれも直せません。
- ①で繰り返し見送られる → 資料形式、一文ピッチ、チーム紹介を修正する — 1週間以内に対応可能
- ②で繰り返し見送られる → MVPを作り、支払い・インタビューのデータを蓄積する — 3–6か月必要
- ③で繰り返し見送られる → IR資料作成の8つのコツを一通り確認する — 2週間で修正
- ④で繰り返し見送られる → ほかのパートナーを納得させる補足資料を用意し、窓口となる担当者を変える
- ⑤で繰り返し見送られる → 会計士と弁護士を通じて財務・法務を整理する — 4–8週間
- ⑥で繰り返し見送られる → 企業価値評価の交渉姿勢を見直す(プライドを優先するのか、評価額を目的地ではなく通過点と捉えるのか)
どの段階で見送られているかを把握する
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