#TAM・SAM・SOMの正確な定義
3つの市場規模は、同じ市場を段階的に絞り込む同心円です。一番外側がTAM、その内側がSAM、中心の最も小さい円がSOMです。3つのうち1つしか示さなければ、VCはすぐに残りの2つを問いただします。
| 用語 | 定義 | 実際に意味するもの |
|---|---|---|
| TAM(獲得可能な総市場) | 自社製品が世界で100%のシェアを獲得した場合の市場全体 | 理論上の上限 |
| SAM(提供可能な市場) | 地域、言語、規制、販売チャネルの制約の中で、実際にアプローチできる市場 | 現実的に事業を展開できる範囲 |
| SOM(獲得可能な市場) | 今後3〜5年で現実的に獲得できる市場(通常はSAMの5〜15%) | 実際の売上が生まれる範囲 |
VCはTAMの大きさだけでは心を動かされません。TAMは「参入するに足る規模があるか」という最低条件にすぎず、実際の投資判断はSAMとSOMの水準で行われます。
#トップダウン推計:速いが、根拠が弱くなりやすい
トップダウン推計は、外部レポートの大きな数字を出発点に、自社が対象とするセグメントの比率を掛けて絞り込む方法です。この方法なら30分でスライドを作れますが、各段階で掛ける比率に十分な根拠がなければ、数字は膨らみます。
- 例:韓国国内の広告市場₩30T × デジタル比率60% × モバイル比率80% = ₩14.4T
- 長所:速く、政府統計や市場調査レポートを引用すれば出典も明確に見える
- 短所:掛け合わせた比率が、自社の具体的な事業に本当に対応しているかを検証しにくい
- VCの反応:「その₩14.4Tのうち、実際にいくら売れるのか」とすぐに聞かれる
#ボトムアップ推計:VCがより信頼する方法
ボトムアップ推計は、「顧客単価 × 顧客数 = 市場」という式で数字を積み上げます。実際の料金表と潜在顧客数から始めるため、数字は小さく見えるかもしれませんが、VCからの信頼ははるかに高くなります。
| 変数 | 数値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 顧客単価 | 月額₩50KのSaaS | 現在の自社料金表 |
| 潜在顧客数 | 韓国全国の中小企業700,000社 | 政府の事業所統計 |
| 3年間の普及率 | 1% | 類似SaaSの市場普及曲線 |
| 年間市場規模(SOM) | 約₩4.2B | ₩50K × 12 × 7,000社 |
ボトムアップの本当の価値は、数字そのものではなく、事業モデルを変数に分解できることです。顧客単価、顧客数、普及率がすべて明確なら、VCはどの変数を動かせば市場が拡大するかをすぐに理解できます。
#両方の推計を照合する:Facebook広告市場の例
トップダウンとボトムアップで近い数値が出ると、スライドの説得力は大きく高まります。Facebook広告向けソリューションを販売するアドテックのスタートアップを例にすると、両手法での推計は次のようになります。
- トップダウン:世界のデジタル広告市場約₩700T × Facebookのシェア約25% = TAMは₩175T
- ボトムアップ:Facebook広告を出稿する広告主数 × ソリューションの平均単価 × ソリューションの普及率 = SAM
- 両方の数字が同じ桁の規模に収まれば合格 — 桁が1つ違うなら、どちらかが間違っている
2つの手法で差が出る箇所こそ、前提が最も弱い箇所です。トップダウンの結果が大幅に大きいなら、SAMの対象外となるセグメントの除外が漏れています。ボトムアップが大幅に小さいなら、価格帯やユースケースの定義が狭すぎます。
#「この市場は小さすぎる」:見送りの本当の意味
VCが「この市場は小さすぎる」と言うとき、本当に意味しているのは、「このSOMでは、当ファンドの8年という存続期間内に10倍のリターンを出せない」ということです。ファンド自体の構造が、その回答を求めています。
| ファンドの変数 | 数値 | 意味すること |
|---|---|---|
| ファンドの存続期間 | 約8年 | この期間内にエグジットする必要がある |
| 目標リターン | 1案件あたり10倍(ファンド全体では3〜5倍) | 平均を引き上げるため、一部の投資先が10倍以上を達成する必要がある |
| 年間の検討案件数 | 約100件 | 実際に投資するのは、そのうち2〜3件のみ |
| 最大の見送り要因 | 8年以内に10倍のリターンを出せないSOM | 市場が小さすぎると、シェア100%でも届かない |
つまり、市場が「小さい」と言われても、事業モデルが悪いという意味ではありません。「このSOM × 市場シェアのシナリオでも、当ファンドのリターンモデルに数字が合わない」という定量的な見送りです。取るべき対応は事業モデルを擁護することではなく、時間とともにSOMがどう拡大するかを、より説得力を持って示すことです。
#市場スライドでよくある4つの間違い
投資家がピッチ資料を開いて最初の30秒で最もよく見つける4つの間違いには、決まったパターンがあります。
- TAMだけを示し、SAMやSOMがない — 「世界で₩1,000Tの市場」という1行だけでは、その場で見送られる
- 世界のTAMに一国の比率を掛けただけなのにSAMと呼ぶ — 地域、言語、規制の制約を無視している
- SOMがSAMの50%を超える — 推奨範囲の5〜15%から外れると、現実性を疑われる
- 市場規模と事業モデルが一致しない — 実際の製品がB2B SaaSなのに、B2C広告市場の数字を引用する
最も致命的なのは4つ目の間違いです。韓国の食料品宅配の先駆者であるMarket Kurlyが早朝配送市場を定義したとき、重要だったのは「食品市場全体」ではなく、「高品質な生鮮食品の定期宅配を現実的に利用できる世帯数」でした。そのセグメントを正確に切り出したからこそ、市場スライドが評価を通過したのです。
#VCが信頼する市場スライドの4要素
評価を通過する市場スライドには、次の4つの要素がすべて含まれています。1枚に収まらなければ、2枚に分けても構いません。
| 要素 | 求められる水準 | 例 |
|---|---|---|
| 出典のある定量データ | 政府統計、市場調査会社、上場企業の開示資料 | 国の統計機関、業界の規制当局、公開開示資料 |
| トップダウンとボトムアップの両方の推計 | 両方の数値が同じ桁の規模に収束する | トップダウン:₩14T / ボトムアップ:₩11T |
| 3〜5年後のSOM | CAGRと自社の普及率を使って算出する | 現在₩4.2B → 3年後₩30B |
| SAM拡大を促すトレンドを1つ | 規制緩和、新技術の普及、人口動態の変化など | 電子請求書の義務化対象の拡大 |
#送信前の6つのセルフチェック
ピッチ資料を送る前に、市場スライドを次の6項目でもう一度確認し、資料が見送られる最大の原因を避けましょう。
- TAM・SAM・SOMがすべて1枚のスライドに載っていますか?
- SAMをトップダウンとボトムアップの両方で計算しましたか?
- データの出典を本文または脚注に記載していますか?
- SOMはSAMの1〜15%の範囲内ですか?
- 市場規模は自社の事業モデル(B2C/B2B/B2G)と一致していますか?
- このSOM × 5年後の想定市場シェアで、VCファンドのIRR目標(10倍)を満たせますか?
VCの見送り基準で市場スライドを診断する
OpenSeedのAIレビューは、TAM・SAM・SOMの数字をトップダウンとボトムアップで相互検証しているか、SOM比率が現実的な範囲内か、市場規模と事業モデルが一致しているかを一度に確認します。事業計画書やピッチ資料をアップロードすると、市場規模のスライドで最も弱い部分から指摘します。
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