#著書に登場する実例 — 18か月後に何が起きたのか
この一文に凝縮された廃業までのシナリオを分解すると、次のようになります。すべての段階は、過大な評価額で資金調達するという最初の1つの判断に行き着きます。
| 時期 | 出来事 | 結果 |
|---|---|---|
| T+0か月 | 市場での適正価値が₩10Bのところ、₩20Bの評価額でシリーズAを完了 | ₩5Bを調達 |
| T+6か月 | ₩20Bの評価額を正当化するKPI達成への圧力 | チームのバーンレートが急上昇 |
| T+12か月 | 月間営業費用が₩400Mに達し、ランウェイが18か月から14か月に短縮 | 次のラウンドを開始 |
| T+15か月 | 次のラウンドのVCが「前回の評価額は正当化しにくい」と指摘 | ダウンラウンド交渉へ移行 |
| T+18か月 | ダウンラウンド交渉が決裂し、資金が尽きる | 廃業 |
#200〜300%の評価額から廃業に至る4段階の仕組み
「評価額が高くても問題はない」という直感が誤っているのは、高い評価額が自動的に次の4段階を引き起こすからです。
- 第1段階 — KPI達成への圧力 — ₩20Bの評価額を付けると、それを正当化するKPIを1年で達成しなければなりません。人件費とマーケティング費によるバーンレートが自動的に上がります
- 第2段階 — 資金消費の加速 — 18か月持つはずだった資金が、実際には12〜14か月分のランウェイに縮みます
- 第3段階 — 次回調達でのダウンラウンド圧力 — 新たなVCは「前回の評価額は過大だった」と判断し、評価額を下げる方向で交渉します
- 第4段階 — ダウンラウンドを拒否 → 交渉決裂 → 資金枯渇 → 廃業
#130%の上限 — 本当に投資需要が高い場合に限って届く水準
では、妥当な交渉レンジの上限はどこにあるのでしょうか。イ・テギョンの著書は、この点を具体的に示しています。
| 市場の投資需要 | 交渉可能な上限 | 例(適正価値₩10Bの場合) |
|---|---|---|
| 非常に高い(複数のVCが競合) | 130% | 最大₩13B |
| 中程度の需要 | 100%またはそれを少し上回る水準 | ₩10B〜11B |
| 需要が低い | そもそも資金調達が成立しない | 交渉自体が成り立たない |
| 過大な要求(200〜300%) | すべての投資家が離れる | 交渉決裂 |
#ラウンド別の標準的な企業評価額レンジ
「適正価値の130%」がいくらなのかを計算するには、まず自社のステージの標準レンジを知る必要があります。以下は韓国市場での一般的なレンジです。
| ラウンド | 標準的な企業評価額レンジ | 130%の上限 | 200%超=即座に見送り |
|---|---|---|---|
| シード | ₩500M〜4.0B | ₩520M〜5.2B | ₩1.0B〜8.0B超 |
| プレシリーズA | ₩4.0B〜10B | ₩5.2B〜13B | ₩8.0B〜20B超 |
| シリーズA | ₩10B〜25B | ₩13B〜32.5B | ₩20B〜50B超 |
| シリーズB | ₩25B〜75B | ₩32.5B〜97.5B | ₩50B〜150B超 |
| シリーズC | ₩75B〜150B | ₩97.5B〜195B | ₩150B〜300B超 |
#「評価額は自分のプライド」という姿勢が伝えるもの
交渉中の話し方からVCが読み取るサインの中で、最も危険なのは、プライドの問題として「評価額は譲らない」と言い切る姿勢です。イ・テギョンのペルソナに基づくと、そこから次のような推測につながります。
- 「少なくともX社と同じ評価額を付けてもらうべきだ」— 単純な他社比較です。その会社の事情を実際には知らないため、判断力を疑われます
- 「この評価額でなければ、調達自体をしない」— 自社のランウェイを無視しています。事業そのものを軽視していると受け取られます
- 「評価額は一切交渉しない」— 長期的なパートナーとしての適性を疑われます。投資家は、今後のあらゆる交渉でも同じ硬直的な対応をすると予想します
- 「ほかのVC数社は、もっと高く評価している」— 検証できない交渉上の主張であり、信頼を損ないます
#イ・テギョンのペルソナが評価する、実際に有効な交渉の姿勢
反対に、交渉の場でイ・テギョンのペルソナから評価される4つの姿勢を紹介します。いずれも、評価額は目的地ではなく通過点だという前提に立っています。
| 評価される姿勢 | 言い方の例 | 評価される理由 |
|---|---|---|
| 必要な調達額から話す | 「18か月運営するために、約₩700Mが必要です。」 | 評価額は交渉可能だと伝わる |
| 自社のステージの標準レンジを把握する | 「シードの標準レンジ内で交渉したいと考えています。」 | 健全な判断力が伝わる |
| トレードオフを認める | 「今の評価額を上げれば、次のラウンドのハードルも上がります。」 | 長期的によいパートナーになると伝わる |
| 相性を優先する | 「私たちにとっては、数字よりも相性のよい投資家を見つけることが重要です。」 | 関係を重視する姿勢が信頼につながる |
#セルフチェックリスト
バリュエーション交渉に入る直前に確認すべき6項目です。1つでも「いいえ」があれば、まず交渉の姿勢を見直してください。
- 自社のステージの標準レンジ(例:シードなら₩500M〜4.0B)を把握し、最初の提示額をその範囲内に設定していますか?
- 目標評価額は適正価値の200%未満に収まっていますか?(それを超えると、交渉が完全に決裂するリスクがあります。)
- 実際に必要な調達額(推奨目標は18か月分のランウェイ)を先に示し、そこから評価額を導いていますか?
- 資料から、単純な他社比較を取り除いていますか?
- 今の評価額を上げると次のラウンドのハードルが上がるというトレードオフを、事業計画に明記していますか?
- 初回面談の資料には「数字よりも相性のよい投資家が重要だ」という姿勢が表れていますか?
交渉前に、評価額200%の落とし穴を確認する
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