#PMFとFPF — 何が違うのか
PMF(製品と市場の適合性)は、製品が市場に合っているかを問います。ユーザーが本当に求めるものを作れたかを測る指標で、通常はシリーズA後に本格的に検証されます。一方、FPF(創業者と課題の適合性)は、創業者がその課題を解決するのにふさわしい人かを問います。PMFが成立する前、つまりシード期に、投資家が最も頻繁に確認する指標です。
| 指標 | PMF | FPF |
|---|---|---|
| 何を測るか | 製品 ↔ 市場 | 創業者 ↔ 課題 |
| いつ測るか | シリーズA後 | シード/プレシード |
| どう測るか | 継続率、転換率、NPS | 面談、実績、執着 |
| 欠けている場合 | 会社が規模を拡大できない | 会社が探索の段階そのものでつまずく |
| 修正できるか | ピボットによって立て直せる | チームを変えずに立て直すのは難しい |
#FPFの3要素 — 経験、執着、取り組み続ける理由
FPFは抽象的な概念ですが、3つの要素に分解できます。投資家が30分の面談で手早く見極めようとするのも、この3つです。
| 要素 | 定義 | 診断のための問い |
|---|---|---|
| 経験 | 直接・間接を問わず、この課題をどれほど深く経験してきたか | いつ、どのような状況で、初めてこの課題に直面しましたか? |
| 執着 | ほとんど理屈では説明できないほど、この課題に強くこだわっていること | 代わりに解決したい、ほかの課題はありますか?(あるなら警戒すべき兆候です) |
| 取り組み続ける理由(なぜ今、なぜ自分か) | なぜ今なのか、そしてなぜ自分でなければならないのか | あと5年、この課題に向き合い続けられますか?それはなぜですか? |
3つのうち1つでも弱いと、FPFは揺らぎます。経験があっても執着がなければ、「市場が変わった途端に離れる人」に見えます。執着があっても経験がなければ、「熱意はあるが理解の浅い素人」に見えます。取り組み続ける理由がなければ、「5年後には別の会社にいる人」に見えます。
#投資家が見る兆候 — 「なぜこの人なのか?」
FPFが強い創業者には、自然と現れる兆候があります。どれも、取り繕うのが非常に難しいものです。
- この課題で自分自身が苦労した具体的なエピソードを、すぐに5つ以上話せる
- その分野の専門用語、指標、慣習を自然に使う(部外者には取り繕えません)
- 見込み顧客へのインタビューを50件以上実施し、記録を整理している
- ブログ、コミュニティ、研究成果の発表など、関連する活動を1年以上続けている
- 既存の解決策が失敗した理由を、データや具体的なエピソードで説明できる
- 「この課題がいつまでも解決されなかったらどうなるか」に対して、心からの感情的な反応を示す
#FPFが弱いときによく見られる兆候
- 「今これが流行っている」など、外部のきっかけから始めている
- 創業者自身はこの課題で困ったことがなく、市場調査レポートだけで見つけた課題である
- この課題以外にも関心が分散している — 「AIでXもYも作りたい」
- その分野の専門用語を誤用する、または主要指標を知らない
- 見込み顧客へのインタビューが10件未満で、相手も家族や友人が中心
- 5年後にこの会社で何をしているかという問いへの答えが曖昧
#FPFを強化する — 3か月の行動計画
FPFは、生まれつき備わっているものではありません。築くことができます。次の3か月の行動計画は、シード調達を控えた創業者に推奨される標準的な取り組みです。
| 月 | 行動 | 成果物 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 見込み顧客へのインタビュー30件(セグメント別に10人ずつ、3グループ) | インタビュー記録表+主要な発言のグループ分け |
| 2か月目 | 分野への理解を深める — レポート20本、専門家へのインタビュー5件 | その分野をまとめた1ページの資料+主要指標の定義 |
| 3か月目 | MVPまたはLOI(意向表明書)を5件、加えてパイロットを実施 | ユーザーのフィードバック+初期の売上・利用指標 |
3か月後、これらの成果物をそのままIR資料に反映すれば、FPFを示す材料が自然にそろいます。30件のインタビューがPの項目を、分野の要約資料がTの項目を、5件のパイロットがSの項目を、同時に強化します。
#FPF自己診断チェックリスト
- この課題で自分自身が苦労した具体的なエピソードを、5つ以上挙げられますか?
- 見込み顧客へのインタビューを30件以上実施しましたか?
- その分野特有の用語や主要指標を、5つ正確に定義できますか?
- この課題以外に解決したいことはありますか?(あるなら、FPFが弱まっている兆候です)
- 5年後にこの会社で何をしているか、1文で答えられますか?
- 既存の解決策が失敗した理由を、データや具体的なエピソードで説明できますか?
- この課題がいつまでも解決されなかったら、どう感じますか?(心からの感情的な反応がありますか?)
#おわりに — 良いアイデアより、課題との適合性
投資家が「良いアイデアより、課題との適合性を見る」と言うとき、それはFPFを見ているという意味です。同じアイデアでも、誰が取り組むかによって結果はまったく変わります。そして適合性は、誰かに評価される前に、自分自身で率直に見極められるものです。
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