#バーンレート — グロスとネットの違い
バーンレートは、会社が毎月支出する現金の額です。売上のある会社では、グロスバーン(総支出)とネットバーン(支出から売上を引いた額)が異なり、投資家は両方を確認します。
| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| グロスバーン | 月間総支出(人件費+運営費+マーケティング費+外注費) | コスト構造の絶対的な規模 |
| ネットバーン | グロスバーンから月間売上を差し引いた額 | 実際に現金が減っていくペース |
| ランウェイ | 手元資金 ÷ 月間ネットバーン | 現在の資金で事業を継続できる月数 |
#ランウェイ — 次のラウンドまでに残された時間
ランウェイが答えるのは、現在の銀行預金で会社はあと何か月事業を続けられるか、という1つの問いです。シードラウンド後は18-24か月のランウェイ確保を標準的な目標とし、その期間内に余裕を持ってシリーズAを完了することを目指します。
| ラウンド | 推奨ランウェイ | 次のラウンドの準備を始める時期 |
|---|---|---|
| プレシード → シード | 12-18か月 | ランウェイが残り6か月の時点で資金調達の対話を始める |
| シード → シリーズA | 18-24か月 | ランウェイが残り9か月の時点で資金調達の対話を始める |
| シリーズA → B | 18-24か月 | ランウェイが残り9か月の時点で資金調達の対話を始める |
#バーンマルチプル — 事業拡大期の効率性指標
シリーズA後に事業を拡大する段階では、バーンマルチプルという効率性指標も重要になります。ARRを1ドル生み出すために、何ドルの現金を消費したかを示す指標です。シリーズAやBの投資家は、この数値を売上成長率とほぼ同じくらい重視します。
| バーンマルチプル | 効率性の評価 |
|---|---|
| < 1x | 極めて優秀 — 売上の増加が支出を上回っている |
| 1x - 2x | 優秀 — 効率的な成長 |
| 2x - 3x | 良好 — 平均的な水準 |
| > 3x | 要注意 — コスト効率の見直しが必要 |
計算式:バーンマルチプル = ネットバーン ÷ 純増ARR。シード段階ではARRがまだ小さすぎるため、この指標の意味は限定的ですが、シリーズA以降は主要な指標になります。
#ランウェイ短縮の警告サイン — 早期に捉えたいパターン
- 月間ネットバーンが3か月連続で10%超増加している — コストを管理しきれていない兆候
- 採用のペースが売上成長を上回っている — 人件費が総支出の70%を超えている
- マーケティング支出が増えているのに、新規顧客の増加が止まっている — CACが急上昇している
- 売上に対して在庫や外注のコストが異常に増えている — 価格交渉力が弱まっている兆候
- 新規顧客に対して解約が増えている — 純増ARRがマイナスになっている
#ランウェイ短縮への対応策
| 対応策 | 効果 | リスク |
|---|---|---|
| ブリッジラウンド | ランウェイを6-12か月延長できる | 既存投資家の賛同が必要で、企業価値の評価は据え置きになる |
| コスト削減 | 月間バーンを即座に減らせる | 士気が下がり、重要な人材を失うリスクがある |
| 収益化の前倒し | ネットバーンを減らせる | PMF検証の進め方を乱すリスクがある |
| 受託案件による売上 | 現金収入を得られる | 純粋なSaaSビジネスモデルが不明瞭になる |
| 政府の支援プログラム | コストの一部を賄える | 事務負担があり、時間がかかる |
どの対応策が適切かは、タイミングと事業段階によって大きく変わります。シード段階のブリッジラウンドでは、企業価値の評価が据え置かれたうえで追加の希薄化が生じます。一方、シリーズB直前のコスト削減は、投資家の信頼回復を難しくする可能性があります。
#投資家向け報告の標準フォーマット
月次または四半期の投資家向け報告では、バーンとランウェイを次の4行で示すのが標準的です。
- 現金残高 — 月末時点の銀行預金残高
- 月間ネットバーン — 直近3か月の平均
- ランウェイ — 現在の現金残高 ÷ 月間ネットバーン
- 次のラウンドの予定 — 資金調達を開始する目標日
#セルフチェック:創業者向けチェックリスト
- 今月のネットバーンを、1秒以内に即答できますか。
- 現在のランウェイは、12か月、18か月、24か月のどれに近いですか。
- 過去3か月のバーンは安定していますか。それとも増加傾向ですか。
- ランウェイが9か月以上残っているうちに、次の資金調達を開始する目標日を設定していますか。
- ランウェイが残り6か月になった場合に備え、ブリッジラウンド、コスト削減、政府支援などの代替策を用意していますか。
- 投資家に月次または四半期でバーンとランウェイを報告していますか。
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